技術情報
VSACとEV時代 〜電動化に対応する音響試験環境〜
2025/06/25
- 無響室・防音室のソノーラ
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- VSACとEV時代 〜電動化に対応する音響試験環境〜

静かだからこそ「音が目立つ」──EV時代の音響課題
従来のガソリン車では、エンジンや排気音が車両全体の音響特性において支配的でした。
しかし、電動化が進む現在の車両(EVやハイブリッド車)では、エンジン音が消える一方で:
- インバーター音
- 冷却ファン
- モーター駆動音
- 車内への透過音
- 逆に「聞かせる」意図的な警告音(AVAS)
など、微小音が明瞭に顕在化してきています。
このような背景から、「音が目立たない空間」で車両単体の音源を精密に評価できる音響環境が、かつてないほど重要になっています。
その中核が、VSAC(Vehicle Semi-Anechoic Chamber:車両用半無響室)です。
VSACとは何か?
VSACは、車両の騒音評価や解析を行うための大型の半無響室です。
具体的には:
- 床面は硬く平坦な反射面(実路面再現)
- 壁・天井は高性能吸音材(BFWなど)で覆われた吸音面
- 空調・照明・設備は音響反射・騒音源にならない設計
- 車両の回転・駆動・ファン動作・AVASなどの測定が可能
という特徴を持ち、ISO 3744、362、13325などの測定規格にも準拠可能です。
なぜ今、VSACが求められているのか?
1. EVは“静か”が前提。だからノイズが許されない
EVは低騒音であるがゆえに、わずかな異音や不快な高調波が品質問題として顕在化します。
特に:
- 高周波のインバーター音
- 電動パワートレインの微振動
- 車内へ透過する音響漏れ
などが、精密かつ再現性の高い音響評価環境でないと捕捉できません。
2. 車両自体が「音を出す時代」に
歩行者保護のため、EV車にはAVAS(車両接近通報装置)が義務化されています。
この“聞こえやすく不快でない人工音”の設計には、客観的に評価できるVSACが不可欠です。
3. 周波数レンジが広がる
エンジン車では主に低〜中周波中心だった一方で、EVでは1kHz〜10kHz以上の帯域も重要になってきました。
これに対応できる高遮断周波数の吸音楔(例:BFW)と、残響の少ない空間設計が求められます。
ソノーラのVSAC:EV時代に最適化された構造
ソノーラが提供するVSACは、EVの微小音・高周波音の精密評価を前提に設計されています。
- BFW(Broadband Fractal Wedge)による広帯域吸音
- 天井・壁面の吸音パターン最適化で高遮断周波数にも対応
- 床面はISO準拠の完全反射処理+低振動支持
- EVファンノイズ試験・AVAS評価用マイク配置に対応
- 車両用シャシダイナモとの統合構成も可能
さらに、HBKとの協業により、サウンドパワー測定や音響イメージング機器との統合も視野に入れたトータル音響測定環境としてご提案できます。
まとめ:EV時代の音は「見えにくいからこそ測る空間」が要る
EV時代の車両は、「音がしない」ではなく「音が目立つ」時代。
その中で、VSACは見えない音を可視化し、製品の静粛性・音質を支えるための基盤です。
電動化の進展とともに、ソノーラはVSACの設計・施工・測定環境の最適化を通じて、静かで心地よいモビリティ社会の実現に貢献していきます。
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