技術情報
音環境の“バランス設計”
─ 吸音と遮音のちょうどいい関係 ─
2025/10/20
- 無響室・防音室のソノーラ
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- 音環境の“バランス設計”
はじめに
騒音対策を考えるとき、「遮音」か「吸音」か、どちらを優先すべきか——
この質問を多くの現場で耳にします。
実は、遮音と吸音はどちらかを選ぶものではなく、“組み合わせて成立する”技術です。
遮音が「音を通さない壁」だとすれば、吸音は「音を整える壁」。
両者のバランスが取れてはじめて、快適で安定した音環境が実現します。
本記事では、遮音と吸音の役割を整理し、その「ちょうどいい関係」を設計的に考えます。
遮音と吸音の違いを正しく理解する
要素 | 遮音(Sound Insulation) | 吸音(Sound Absorption) |
---|---|---|
目的 | 音を通さない | 音の反射を減らす |
対象 | 壁・扉・構造体 | 壁・天井・内部空間 |
効果 | 音漏れ防止 | 反響・こもりの抑制 |
設計視点 | 構造・質量・気密 | 材質・表面・配置 |
つまり、遮音は音のエネルギーを閉じ込める技術、吸音は閉じ込めた音の反射を整える技術です。
片方だけを重視すると、次のような問題が生じやすくなります。
- 遮音のみ → 反響が増してうるさく感じる
- 吸音のみ → 音は柔らかくなるが、隣室に漏れる
バランス設計がなぜ重要なのか、ここに理由があります。
バランスを崩すとどうなるか
遮音だけ、吸音だけの設計は、それぞれに明確な“欠点”を生みます。
遮音偏重の例
遮音性能の高い壁を設けても、内部が硬質面だけだと反射音が増え、会話やアラーム音が聞き取りづらくなります。
結果的に「静かなのに、うるさい」という逆効果を招くことがあります。
吸音偏重の例
室内の吸音を強めすぎると、外部への音漏れを防げず、特に低周波域で遮音不足が目立ちます。
また、過度に音を吸いすぎると空間が“デッド”になり、違和感を生むこともあります。
適切な音環境とは、遮音と吸音が補い合うバランス点にあります。
バランス設計の基本構成
静音化空間をつくる際は、以下の3層構造を意識するのが基本です。
1. 外層(遮音層)
鉄板・石膏ボードなどの高密度材で音の透過を防止。
2. 中間層(空気層+吸音層)
空気層で音の伝播を遅らせ、吸音層で反射を吸収。
3. 内層(吸音仕上げ)
作業空間の残響を抑え、聞き取りやすい環境を整える。
このとき、吸音材としてBFシリーズ(Broadband Fractal Series)を配置すると、非繊維・広帯域吸音の特性により、各層の役割を安定して両立できます。
BFシリーズを活用した「ハイブリッド遮音設計」
BFシリーズは、吸音と遮音の橋渡しをする材料として利用できます。
- 遮音壁の裏面吸音処理で内部共鳴を防止
- 天井吸音パネルで反射を減らし、音圧を均一化
- 囲い構造内部への配置で外部漏れと内部反射を同時に抑制
非繊維系素材のため、粉塵を発生させず、食品・医薬・精密機器分野にも適用できます。
また、湿度や温度変化に強く、遮音構造の長期安定性にも寄与します。
設計時に意識すべき“バランス指標”
音環境のバランス設計を考える際は、以下の3つの指標を意識します。
指標 | 内容 | 設計目安 |
---|---|---|
遮音等級(D値) | 壁を透過する音量の指標 | D-40以上で工場レベルの静音性 |
残響時間(RT) | 音が減衰するまでの時間 | 0.4〜0.8秒が作業空間の快適範囲 |
吸音率(α) | 壁・天井の音吸収性能 | 0.6〜0.8で明瞭度の高い環境 |
これらを同時に最適化することで、「聞き取りやすく・響かず・漏れない」空間が実現します。
まとめ:音を“止める”と“整える”の調和設計
防音の本質は、「止める」と「整える」の両立にあります。
遮音だけでは硬く、吸音だけでは弱い。
両者の中間にこそ、快適で機能的な音環境が成立します。
BFシリーズはその中核を担う吸音材として、遮音構造の内部で反射と共鳴を制御し、安定した音のバランスを保つ役割を果たします。
静けさを設計することは、音のバランスを設計すること。
それが、現代の産業空間に求められる防音設計の考え方です。
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