技術情報

クリーンルームに“音響設計”を。静粛と清浄を両立する空間づくり

2025/10/14

クリーンルームと聞くと「空気の清浄度」ばかりに注目が集まりがちですが、
実は音環境(騒音・残響・共鳴)も作業品質や快適性に直結します。
本記事では、クリーンルームの清浄空間における“音響設計”の考え方と、
衛生性を損なわずに静粛性を確保する最新の吸音技術について解説します。

クリーンルームにも“音”の設計が必要な理由

クリーンルームの環境設計は、温度・湿度・風速・粒子濃度などの制御が中心ですが、
騒音と残響も作業品質に少なからず影響を与えます。

  • ファンユニットやHEPAフィルターの風切り音
  • ドアやシャッター開閉時の反射音
  • 吸音が足りない室内での共鳴・反響

これらの要素が重なると、作業者の集中力低下・誤操作・測定精度のばらつきにつながることがあります。
つまり、清浄度と同じように「音響的な清潔さ」もクリーンルームの品質要件のひとつなのです。

騒音源を特定する──音響設計の第一歩

静粛化を考えるとき、最初にやるべきは“騒音源の可視化”です。
主な音源は以下の3つに分類されます。

分類代表的な発生源対策アプローチ
機械騒音ブロワー、真空ポンプ、搬送モーター遮音・防振・防振架台
空調騒音吹出口・ダクト共鳴音吸音ダクト・低圧損構造
反射音・共鳴壁面・天井・床反射吸音内装・パネル設置

特に反射音対策は軽視されがちですが、
クリーンルームは壁面が金属・樹脂パネルで構成されているため、
「吸音ゼロに近い硬質音場」となり、
わずかな機械音も反響し、室全体が“響く印象”になりがちです。

清浄空間に求められる“吸音材の条件”

一般的な吸音材(グラスウール・ウレタンフォームなど)は、
発塵・吸水・経時劣化などの理由でクリーンルーム内には不適です。
そこで必要になるのが、以下の要件を満たす素材です:

  • 非繊維系構造(粉塵・繊維飛散なし)
  • 吸水しない・拭き取り清掃対応
  • 低VOC・耐薬品性あり
  • 防火(不燃)認定取得可能
  • 中高音域で高い吸音率を持つ

たとえば、BFB(Broadband Fractal Board)のような素材は、
これらの条件を満たすクリーン対応吸音材として多くの現場で採用されています。
特にクラス100クリーンルーム対応実績
を持つ点は、
医薬・半導体・食品製造などの分野で信頼を得ています。

クリーンルーム音響設計のポイント

音響設計は「素材選び」だけでなく、配置と空調との整合性が重要です。
以下の3ポイントを押さえると、施工効果が大きく変わります。

① 吸音配置のバランス

音の反射が強い壁・天井面を中心に、上部・斜め面に吸音パネルを配置することで床反射と複合する“残響ドーム”を防ぎます。

② 吸音+遮音の組み合わせ

設備室や通路との間仕切りには遮音パネル構造+吸音仕上げを組み合わせると、遮音と反射制御の両立が可能になります。

③ 気流設計との整合

吸音パネルを設置する際は気流分布を乱さない配置が必須。
BFBなどは通気・清掃対応の設計が可能で、空調性能を損ないません。

導入事例:電子部品製造クリーンルームの静音化

背景

ライン全体の送風装置による常時騒音(約80dB)が作業者の集中を妨げていた。
壁・天井は金属パネルで反射音が強く、会話が聞き取りづらい状況。

対策

  • 天井梁下と一部壁面にBFBパネルを設置
  • 音源側では吸音ダクトを採用
  • 清掃ルールに合わせた取り外し可能構造を採用

結果

  • 平均騒音レベル:80dB → 72dB(約8dB低減)
  • 音のこもり感が減り、作業者の集中度が向上
  • 清掃検査も通過し、衛生性・静粛性を両立

まとめ ─ 清浄と静寂の両立は品質を高める

クリーンルームにおける音響設計は、単なる快適性ではなく品質管理そのものです。
作業者が集中できる環境は、ミスを減らし、測定精度を上げ、最終製品の信頼性にもつながります。

静けさをデザインすることは、清浄を守ることと同義。
これからのクリーンルームは、「静けさを含めて清浄である」ことが求められます。

CONTACT 電話でのお問い合わせ

03-6805-8988

受付時間 / 9時~17時

メールでのお問い合わせ

    SHOW ROOMソノーラ・ショールームのご案内

    無響室・防音室メーカーであるソノーラテクノロジーでは、東京、静岡、愛知、兵庫を拠点に、全国対応が可能です。音響測定・調査・診断~設計製造・施工・保証迄の自社一貫体制です。また御殿場市の「富士山テクニカルセンター」には無響室・防音室のショールームがあります。実際に測定器を使用した状態で、当社製品の高い性能を確認いただきながら、独特の無響空間を体感することができます。またショールームの他に、当社紹介の映像、工場の見学も合わせて実施しております。国内にて無響室を無料開放している機関はほとんどありません。製品の購入を検討されている方、当社へ興味をお持ちの方、 一般の方、メディアの方など業務外での御利用も可能です。是非お越し下さい。
    ※現在、一時的に一般個人の方の見学予約を中止させて頂いております。御了承の程お願い致します。

    〒412-0046 静岡県御殿場市保土沢1157-332  東名高速道路 御殿場ICより約15分
    TEL 03-6805-8988 / eFAX 03-6740-7875(全支店共通)

    ショールームについて詳しく見る

    • After service アフターサービス

      全製品1年間の保障付き。当社設計製造施工上の不備に起因する不具合はすぐに対処します。また、移設や改造、メンテナンス等も御相談下さい。

    • FAQ よくあるご質問

      ソノーラテクノロジーの製品やサービスについて、お客様からよくいただくお問い合わせとそのご回答を掲載しています。分からないことはいつでもお問い合わせください。

    CONTACTお問い合わせ・パンフレット請求

    ソノーラテクノロジーの商品に関するお問い合わせやご相談は お問い合わせボタンよりお気軽にご連絡ください。 資料を郵送でご希望の方はパンフレット請求ボタンよりご連絡ください。

    お問い合わせ