技術情報
無響室・半無響室について
2018/06/23
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[1] 無響室の概要
無響音室とも呼ばれるが、一般的には「無響室」という名称が相応しい。
無響室は、測定の対象とする周波数範囲内の音波を充分に吸収する境界面で構成され、その内部では自由音場の条件が成り立つ必要がある。これは、小型・軽量な音源または、設置条件が特定出来ない音源を対象とする。
暗騒音の影響(測定音圧レベルよりも15dB低い状態)や誤差を避ける為に、設置環境周囲音の影響が無い、充分に遮音された(遮音性能の高い)空間の確保が必要である。
また、無響室はコンクリート遮音型とパネル組立型、もしくはパネル+コンクリート型、木+ボード+ベニヤ板型があるが、コンクリート遮音型は振動伝搬(おもに低周波)の問題が非常に発生しやすく、建物にピットを掘る必要性や移設不可能等の問題もあるため、現在は組立パネル式が主流である。
大工による木を使ったものは、不燃材ではなく、移設も実際には不可能なため、コストは抑えられるが例外を除き設計しない。(通常の工場では対応不可。)設置には、遮音量・作業性・内部暗騒音・測定周波数帯を考慮することが重要である。
[2] 半無響室の概要
半無響室は、室内床など境界面の一面、またはその一部が音響的に充分な反射性(反射面の垂直入社吸音率を、測定周波数範囲内で0.06以下)があり、それ以外は、測定対象とする周波数範囲内の音波を充分に吸収する境界面で構成され、反射面上で半自由音場の条件が成り立つ必要がある。
また、重量があり床上に固定される機械類や通常反射面とみなされる室内面上に設置される音源を対象とする。無響室と同等の遮音性能を有し、床面(反射面)には、コンクリート等の充分に硬く、フラットで面密度の高い材料を用いて、振動による反射面からの音の放射が無いように充分注意する必要がある。
[3] 音響パワーレベル
音響パワーレベルは、各種音源からの放射音を表示する基本量であり、特に機械・装置類から発生する騒音の評価量として、検査規定などの中で使われることが多くなっており、その測定方法については、国際規格(ISO・3745)等の内容に準拠しながら実施する ことが望ましい。
音響パワーレベルの意義は、音源が放射する全音響パワーを表す量で、各種音源の性状を表示する基本的な量である。特に機械・装置類から発生する騒音に関しては…
- 機械騒音低減効果の評価
- 機械の発注・検収の為の騒音評価
- 騒音予測の為の基本データ
の収集には無響室による音響パワーレベルによる評価が基本となる。
実際の測定方法については、国際規格(ISO・3740シリーズ)の中で規定されている。
[4] 音圧レベルの距離減衰特性
測定球面または測定半球面に囲まれた領域内における逆二乗則(音源からの距離が2倍になるごとに、音圧レベルが6dB(A)減衰すること)からの偏差は、下表を満足すること。※下限周波数は、通常は最低125~100Hzを目標とし、2~3メートルの範囲で成立することが望ましい。
試験室内音圧レベル距離減衰特性の許容最大偏差
周波数Hz | 許容最大偏差 | |
---|---|---|
無響室 | 半無響室 | |
100/125/250/500 | ±1.5 | ±2.5 |
1K/2K/4K/5K | ±1.0 | ±2.0 |
6.3K/8K/10K | ±1.5 | ±3.0 |
[5] 測定方法
測定球面
無響室における測定では、測定対象音源を取り囲む測定球面を設定する。その中心は原則として、測定対象音源の音響的な中心部とする。半径は、音源の最大寸法の2倍以上で、少なくとも1メートル以上とする。
測定半球面
半無響室における測定では、反射面口に測定対象音源を取り囲む測定半球面(ドーム形)を設定する。その中心は原則として、測定対象音源の音響的な中心の反射面上への投影点とする。半径は、音源の最大寸法の2倍または、音源の中心と反射面との距離の4倍の内、大きい方の寸法以上で、少なくとも1メートル以上とする。
[6] 測定室内外の暗騒音の影響の補正
それぞれの測定点において、測定対象音源が作動している時と、それを停止させた時の音圧レベルの差が、15dB(A)を超える場合は、暗騒音及び測定系の自己雑音の影響は無視出来る。その差が6dB(A)~15dB(A)の間である場合には、音源が作動されている状態で測定された音源レベルに暗騒音の補正を行う必要がある。その差が6dB(A)未満の場合は、測定不可能とする。
[7] 逆二乗特性を損なう主原因(音波反射)
無響室/半無響室での逆二乗特性・性能を損なう(吸音性能低下)主な原因は、これらの測定室に設置されている設備類、例えば鉄格子で作った測定室床や機器移動用のクレーン、及び音源やマイクロフォンを取り付ける金具からの反射音である。
無響室/半無響室では、僅かな反射面をも嫌う為、測定にあたっては、不要である備類は極力取り外し、必要な機器類には吸音処理をすべきである。最も、吸音クサビの鉄フレーム型や、吸音層の表面材なども、反射面を限りなく0に近づける為には不要であるといえる。
無響室等の設置に伴って、作業性確保の為に室内にホイスト・保護網・コンベア・間仕切り等の設備を設置するケースがあるが、大きな反射面を作ってしまうと、 測定室本来の性能を確保出来ない。
反射面の他に、基本的誤りが多いのが「照明」である。蛍光灯を設置しているケースがあるが、蛍光灯の抵抗器雑音は暗騒音へ与える影響が大きい。通常は、抵抗器のない白熱灯を使用するなど対策が必要である。他には、配線ノイズ等にも注意が必要である。
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