技術情報

ウイスキーのための無響室

~薩摩酒造・火の神蒸留所にて~

2026/02/04

鰹節のスモーキーな香りに包まれた鹿児島県枕崎市。
その港町にある薩摩酒造・火の神蒸溜所を訪問しました。

実はこちらにある無響室は、昨年9月にソノーラテクノロジーが無響室を製作し納入した納めたものです。(正確には半無響室です)

─―─ウイスキーをつくる蒸溜所に、なぜ無響室なのか。
今回はその少し不思議なご縁を振り返ってみたいと思います。

きっかけは、ソノーラにかかってきた一本の電話でした。
「ウイスキーのショールームに無響室を作っていただけませんか?」

無響室といえば、音響測定や騒音対策が用途のほとんどです。
ところが今回の目的は、それとはまったく異なるものでした。

「”無響室でウイスキーを嗜む”という、誰もやったことのない体験を実現したい」
そんなご相談でした。
音を測るためでも、外部への音漏れを防ぐためでもない。
視覚と聴覚を極限まで遮断し、“味わうこと”だけに集中する空間をつくりたい―――。

その想いを語ってくださったのが、薩摩酒造のH様です。
H様は東京にあるソノーラのショールームを訪れ、こうおっしゃいました。

「この空間で、ウイスキーを飲んでみたいんです」

その体験を来訪者に届けたいというH様の願いから生まれたのが、火の神蒸溜所のビジターセンターです。

このビジターセンターは、エレガントな味わいを追求する唯一無二のジャパニーズウイスキーブランド“HINOKAMI”の世界観を、より深く体感するための施設。

館内には、無響室だけではなく見学ツアーを予約された方のみが利用できる「RED bar」も併設されています。
日本百名山に数えられ、「薩摩富士」とも称される開聞岳と枕崎の漁港を望むロケーションの中で、ゆったりとウイスキーを味わうことができます。

静寂の中で向き合う一杯。
そこには、音を扱う私たちにとっても忘れられない体験がありました。

今回の訪問は、私と弊社会長の二人で伺いました。
鹿児島中央駅から、あたり一面に広がる知覧茶畑をぬけ、車を走らせること約1時間。
とんびが飛び交う港町が見えてきます。
海の向こうには、絵に描いたような山のシルエット─―─開聞岳です。

この町でまず印象的だったのは、「香り」でした。
町全体に、ふわりと燻したような香りが広がっています。

文章だけで読むと、「煙たい街なのかな?」と思われるかもしれませんが、まったくの逆なんです。
鰹節の華やかさをまとった、まさしくスモーキーなウイスキーのような香り。
とても心地よく、「わ~いいにおい!」と感じられる空気でした。

蒸留所内の駐車場に車を停め、ビジターセンターへ向かいます。
無駄な装飾を一切そぎ落としたコンクリートの塊と、日本庭園を彷彿とさせる緑。
枕崎の山や畑の雰囲気に寄り添いながらも、どこかモダンな佇まいで、まさに“ジャポネーゼ”という印象です。

扉が開くと、レンガ造りのカウンターから受付の方が迎えてくださいました。

無響室施工の際にお世話になったH様、チーフブレンダーであるM様に場内を案内いただきながら、ウイスキーづくりの工程や樽へのこだわり、保存方法など、『エレガントなウイスキー』を生み出すためのさまざまな工夫についてご説明いただきます。

そしてビジターセンターに戻り、いよいよ無響室とのご対面です。

私たちは普段、機能的な明明とした産業用の無響室しか見ていません。

重厚な扉を開けると、暗闇の中にぼんやりと佇んでいるクサビと、じんわり橙色に照らされたバーカウンターが現れました。
暗がりの中に浮かび上がる、黄金のウイスキー。
谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で語ったように、日本の美は、明るさそのものではなく、暗がりの中にほのかに差し込む光や、その陰影の中に宿る―――そんな感覚を思い出しました。

ウイスキーの注がれたグラスには「A」「B」と記されており、飲み比べができるようになっています。

「5分後に戻りますので、どうぞお楽しみください」
そう言い残して、お二人はご退室されました。

ここから先はネタバレになるため詳しくは記しませんが、ほんのわずかな違いで設計されたウイスキーにもかかわらず、圧倒的な香りの違いを体験することができました。(ハンドルキーパーの私は、香りのみ堪能させていただきました)

その後、窓際のRED barへ移動し、4種の飲み比べと、火の神ウイスキーを練り込んだチョコレートの試食も楽しめます。
(○○○のような香りのものや、○○○○○のような香りなど…本当にぜんっぜん違うんです)

いやはや、車で来たことが惜しまれました…。
次回はぜひプライベートで、ゆっくりテイスティングに伺いたいと思います。

HINOKAMI JAPANESE WHISKY|火の神蒸溜所
〒 898-0043 鹿児島県枕崎市火之神北町388番地
TEL: 0120-467-386
MAIL: info@hinokamidistillery.jp
電車、バスをご利用の場合: 枕崎駅からタクシーで約10分
車をご利用の場合: 鹿児島空港から約90分/鹿児島中央駅から約70分
営業時間: 10:00-16:00
休館日: 水曜日

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    ※現在、一時的に一般個人の方の見学予約を中止させて頂いております。御了承の程お願い致します。

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