技術情報

質量則は遮音量の計算根拠にならない

2020/11/02

「防音をするには重い材料を使わなければならない」
これはよく言われることですが、その理由の元になっているのが質量則です。ですが、質量則だけで遮音量を計算することは危険です。

質量則

壁の単位面積あたりの質量が大きいほど透過損失量(遮音量)が高くなることを質量則といいます。これは音の基礎知識として認知されています。

このことから、防音をするには重い材料を使え=質量則が基になっています。ですが、質量則は必要遮音量の計算根拠にはなりません。

その理由について述べたいと思います。(※本記事では、中空二重壁や合わせ板などは除外し、質量則に限定して記載します。)

質量則は単なる目安でしかない

質量則を全ての騒音対策のケースに当てはめること自体が間違っていますが、質量則を必要遮音量の計算根拠とされることは多いです。

TL=18log(f×M)—44
TL:透過損失(㏈)
f:周波数(Hz)
M:面密度(㎏/平米)

この計算ですと、40㎏/平米の遮音材であれば、250Hzでは28㏈となりますので、40Kg/平米の遮音材で縦2m×横2m×高2.5mの防音室を作れば遮音量は28㏈@250Hzになるはず… →いいえ、なりません。

では、質量則は嘘なのか? →嘘ではありません。

質量則の裏側

質量則は、対象とする材料(以下、対象物という)の特定透過音損失計測値を基にしています。

この際、音圧は1㎡(1平米)あたりのエネルギーを計測しています。質量則により透過音を計算する際には1㎡あたりに換算します。

つまり、質量則は1㎡を超える、または、1㎡よりも小さい対象物にはあてはまりません。

前記例にある防音室 縦2m×横2m×高2.5mは表面㎡が24㎡以上のため、質量則適用外ですので、ほとんどのケースで質量則は当てはまらないです。

では、対象物が1㎡を超える場合、1㎡よりも小さい場合、透過損失はどのように変わるのでしょうか?

1㎡を超える場合(同材料、同構造)

低~中周波数帯の透過損失量は下がる傾向にあります。高周波域は誤差が生じます。

1㎡よりも小さい場合(同材料、同構造)

全周波数帯で透過損失量は上がる傾向にあります。

簡単に言うと、面積が大きければ透過損失量は下がる、面積が小さければ透過損失量は上がるという傾向です。その理由の一つは、対象物の振動の影響です。対象物が大きくなればなるほど、対象物は振動がしやすくなります。

音は空気中や物体の振動として伝搬します。対象物が振動しやすくなると、その対象物自体が二次的振動発生源ともなります。(振動により摩擦損失なども発生します。)逆に、対象物の振動のしにくさ(インピーダンス)を上げれば透過損失量が大きくなります。(この際、透過損失という言葉が適切かは不明です。)

実質、質量を上げれば振動のしにくさには繋がりやすいため、「防音をするには重い材料を使わなければならない」という考えは間違ってはいないといえますが、対象物が小さければ、振動のしにくさはアップしますので、質量則は透過損失量の計算根拠にならないということがいえます。

対象物が大きくなればなるほど、質量を上げなければならないのです。質量則は木を見て森を見ず・・の理論です。

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