技術情報
音響測定を正しく行うために
― 騒音計・測定マイク・無響室の違いと、測定環境の考え方 ―
2025/12/26


- 無響室・防音室のソノーラ
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はじめに:音を「測る」とはどういうことか
音響測定の現場では、
- 「騒音計と測定用マイクロホンは何が違うのか」
- 「無響室でなければ測れないのはなぜか」
といった質問をよく受けます。
音を測る機器は一見似ていても、測定の目的・精度・適用規格・必要な環境は大きく異なります。
本記事では、
- 騒音計と測定用マイクロホンの違い
- 無響室が求められる理由
- ISO規格に基づく測定環境の考え方
- 機器と試験空間を含めたトータル設計の重要性
を、実務視点で整理します。
騒音計とは:環境音を評価するための測定器
騒音計(Sound Level Meter, SLM)は、環境騒音や作業環境騒音を評価・記録するための自己完結型測定器です。
特徴
- マイク・アンプ・演算・表示部を本体に内蔵
- 主な測定項目:SPL、LAeq、オクターブバンド分析など
- IEC 61672 に基づき Class 1 / Class 2 の精度等級が規定
- 法規制・環境基準への適合評価を想定した設計
主な用途
- 工事現場や道路・鉄道沿線の騒音評価
- 作業環境騒音の管理
- 近隣クレーム対応の記録測定
騒音計は、誰が使っても一定の再現性と法的妥当性が得られることを重視した測定器です。
測定用マイクロホンとは:音そのものを解析するセンサ
音響測定用マイクロホンは、音の特性を高精度に評価するための音響センサです。
特徴
- マイク単体では測定不可
- 信号調整器(CCLD 等)や解析装置と組み合わせて使用
- 周波数特性・位相特性が極めてフラットで広帯域
- IEC 61094 に基づく Class 1 測定マイクロホンが代表例
主な用途
- 無響室でのスピーカー周波数特性測定
- 音響パワー測定(ISO 3744)
- インパルス応答やFFTなどの時間・周波数解析
測定用マイクロホンは、再現性・精度・空間分解能が求められる試験や研究用途に不可欠なツールです。
騒音計と測定用マイクロホンの違い(整理)
| 項目 | 騒音計 | 測定用マイクロホン |
|---|---|---|
| 構成 | 一体型 | 分離型(マイク+前置+解析) |
| 主規格 | IEC 61672 | IEC 61094、関連ISO規格 |
| 測定内容 | 音圧レベル中心 | 時間・周波数・空間解析 |
| 主用途 | 法的・環境評価 | 試験・研究・製品評価 |
| 操作性 | 比較的容易 | 専門知識が必要 |
無響室での測定が求められる理由
測定用マイクロホンは、自由音場が成立してはじめて本来の性能を発揮します。
そのため、音源評価や音響パワー測定では、無響室や半無響室が使用されます。
ISO 3745:2012 の考え方
ISO 3745:2012 では、吸音材の種類や形状ではなく、逆二乗則が成立しているかを中心に無響室性能を評価します。
- 距離が2倍になると音圧レベルが約6 dB低下
- 環境補正値 K2 ≤ 0.5 dB
- 上記を満たせば、規格に準拠した自由音場と判断
この考え方により、測定精度と人にやさしい音環境を両立する設計が可能になっています。
重要なのは「機器」+「環境」のトータル最適化
音響測定の精度は、
- 測定マイクロホン
- 信号調整器・解析システム
- 無響室・半無響室などの試験空間
これらが一体として設計されているかどうかで大きく変わります。
機器単体の性能が高くても、試験空間の音場性能が不十分であれば、測定結果の信頼性は確保できません。
関連情報:音響測定トータルソリューション
測定機器と試験環境を含めた実践的な音響測定システム構成については、以下のページで詳しく紹介しています。
音響測定トータルソリューションのご紹介
https://acoustic-measurement.com/
(守谷商会 取扱)
ISO 3744 / ISO 3745 に基づく測定構成例や、無響室を含めた実務的なシステム設計の考え方をご覧いただけます。
まとめ:正しい測定は「目的」と「環境」から始まる
- 騒音計は 環境音・規制音を評価する測定器
- 測定用マイクロホンは 音の性質を解析するためのセンサ
- 無響室は 測定精度を成立させるための前提条件
音響測定では、「どの機器を使うか」だけでなく、「何を測りたいのか」「どの環境で測るのか」を整理することが、最も重要な第一歩となります。
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