技術情報

【グローバル顧問:南治子のコラム11】海外代理店がやってきた No.6

2025/06/10

来日した海外代理店DMC社の研修最終日。
本社での最後の座学は、営業・マーケティング活動に関する内容でした。
ソノーラは現在、日本国内における音響用組立式無響室・半無響室・無響箱の製造販売でシェアNo.1を獲得しています。

ちなみにソノーラの営業は、技術的な専門知識を生かしてお客様に提案を行う「技術営業」です。問い合わせから施工完了まで、1案件に対し担当者1名で一貫して担当できるよう、約3年の歳月をかけて営業人材を育成します。
独り立ちした営業担当者は、お客様のご要望に合わせた以下のご提案を行います。

音響計測室、箱の付帯設備の組み合わせによる総合提案
+音響計測機器(騒音計、分析器)+風洞試験設備+恒温恒湿設備+シャーシダイナモ等

つまり、部屋や箱といった製品販売にとどまらず、

「測定性能を保証する環境づくり」

の伴走者として顧客に寄り添う点で、他社にはない価値があります。
また、ソノーラ独自で開発した技術を礎としているため、絶え間ない研究開発による新技術の採用およびアップデートが行われており、営業担当者は常にお客様に対して最新技術をご提案しています。

音響無響室の技術営業を行う上で肝となる部分の説明を一通り終え、研修も終盤を迎えた頃でした。
前日のインドカレーランチで打ち解けた余韻がまだ残っていたのでしょうか、
「これからの営業」について、会長ご自身が思いのたけを熱く語り始めました。

ソノーラは、日本の音響用組立式無響室市場でシェアNo.1を獲得しました。
けれどそこに至るまでの過程には、創業者として複雑な思いを抱かされる出来事も含まれています。
弊社はもちろん競争に打ち勝つためのたゆまぬ努力を続けてきましたが、一方で、競合他社の高齢化・事業承継問題がシェア獲得を後押しした部分もあったことは否めません。
これは非常に残念なことであり、競合他社が自ら蓄積したノウハウが次世代に受け継がれることなく、音響無響室産業全体から失われてしまったわけです。
だからこそ、これからは(擬似AIやプログラムを含む)AIの力が重要であると考えます。
人間はいずれ死を迎え、この世からいなくなります。けれどもAIを活用すれば、その人の頭の中にあった専門知識を半永久的にこの世に残すことが可能になるのです。
ソノーラでは現在、音響無響室に関するビッグデータを構築しています。
音響・無響に関する技術用語・技術データ、技術営業のノウハウ、といった人間の頭の中に存在する知識を可視化し、巨大なデータ集合体を創り上げるのです。
今、ミナミさんが私の話していることを英訳していますが、この業務は近い将来無くなるかもしれません。AIにすべての技術用語を各国語で学習させれば、人間に取って代われるからです。
もしかしたら、海外企業とのビデオ会議にもAIアバターが参加するようになるかもしれません。ビッグデータの頭脳を元に、弊社紹介プレゼンが出来るようになる日はそう遠くはないでしょう。実際の議論に参加するには、まだ時間はかかるものの、将来的に不可能ではありません。
ウェブサイト上でAIアバターが「お問い合わせ窓口」を担当すれば、問い合わせのレベルや内容によって瞬時に選別し、技術営業に引き継ぐか否かの判断を行えます。
我々は少数精鋭ですから、AIと業務分担を行うことでさらなる効率化を実現できるでしょう。
これを国に置き換えて考えると、少子高齢化の進む日本でAIによる労働力の代替を行えば、多くの人口を抱える国と比較して、コンパクトかつ効率のよい経済財政運営が可能になるでしょう。インフラが整備されており高度な教育水準を持つ国では、AI技術の活用が、人口規模に依存しない「スマート社会」の実現性を高めるのです。
AIができることはAIに任せて、人間は人間にしかできない、よりクリエイティブな作業に集中し、ソノーラ・テクノロジーの海外進出を成功に導き、音響無響室で世界シェアNo.1を獲得したいと考えています。

ソノーラ会長の言葉を一語一句訳しながら、私はフランスの名監督、フランソワ・トリュフォーが映画化したレイ・ブラッドベリのSF小説「華氏451」を思い出していました。
華氏451℃は、本が燃え始める温度です。
書物を読むことが禁じられ、見つかれば焼却されてしまう近未来社会で、人々自身が本となり、それぞれの頭の中に文学の記憶を刻み、人から人へと受け継いでゆく美しいストーリーです。
それがまさに、会長がおっしゃった言葉の真意にオーバーラップしました。
「人間はいずれこの世からいなくなるが、AIを活用すれば、頭の中の専門知識を半永久的にこの世に残すことができる」
私は先回のコラムで、創業者には「他にはない先見の明」があると書きました。
DMCの来日から1年半。

当時会長が語った「未来」は、次々と「現実」になっています。
AIアバターは現在、「深海ライラ」という名前で、グローバルホームページ上で実際に活躍しています。

深海ライラ
紹介ページ:https://anechoic-room.com/lyla/
Xアカウント:https://x.com/SonoraTech_JP

AIの翻訳力だけでなく日本語の文章力も、いずれミナミさんを超えていくでしょう。
深海ライラさんはいずれミナミさんの同僚、いえ上司になって、私はライラさんに査定される日が来るかもしれません。
会長が1年半前に描いたソノーラの未来の姿が現実になっていくのを目の当たりにして、「先見の明」とは誰よりも先に行動を起こす力を伴ってこそである、と実感しています。
そして、限られた人的リソースで経営を行われている中小零細企業の皆様が、AIと共存しながら描く未来はとても明るいということを少しでも感じ取って頂けたら、と願いつつ「海外代理店がやってきた」シリーズの筆をここに置きます。

(終わり)

ソノーラテクノロジー株式会社 顧問 南 治子
<略歴> 関西学院大学文学部フランス文学科卒業後、ベルギー王国総領事館商務部勤務を経て、企業顧問・コンサルとして独立。主に欧州企業の日本市場進出支援を行う中で、日本のすばらしい数多くの中小零細ものづくり企業と出会い、日本から世界へフィールドを広げる企業支援も手掛けるようになる。ソノーラでは主に欧州市場新規開拓を支援。

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