技術情報
洗える吸音壁
─ 衛生管理と防音を両立する新内装構造 ─
2025/10/31


- 無響室・防音室のソノーラ
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- 洗える吸音壁
はじめに
HACCPの義務化以降、食品・医薬品などの製造現場では「衛生的な設備構造」が不可欠となりました。
その一方で、包装機や搬送ライン、真空ポンプなどによる騒音は、作業者の集中力や安全性、品質管理に影響を与える要素として無視できません。
従来は、吸音材を使いたくても粉塵・繊維飛散や清掃性の問題から導入が難しい環境が多くありました。
こうした課題を背景に注目されているのが、「洗える吸音壁」構造です。
本記事では、衛生性と防音を両立させる吸音壁の設計要点と適用条件について解説します。
なぜ「洗える吸音壁」が求められるのか
食品・医薬品製造施設では、設備の清掃性と安全性が常に最優先です。
壁面や天井に設置される吸音材も例外ではなく、拭き取り清掃や洗浄が可能であることが必須条件になります。
一般的な吸音材(グラスウール、ウレタンフォームなど)は優れた吸音性能を持つ一方で、衛生環境下では以下のような問題が発生します。
- 繊維・粉塵の飛散による異物混入リスク
- 水分や洗剤の吸収による劣化・カビの発生
- 表面のざらつきによる汚染物の付着
そのため、非繊維系・防水構造の吸音材が必要とされるようになりました。
衛生対応型吸音材に求められる条件
衛生管理基準(HACCP、GMP等)に適合する吸音材は、以下の性能要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 | 
|---|---|
| 非繊維構造 | 繊維や粉末を発生させない構造であること | 
| 防水・非吸水性 | 洗浄液や湿気を吸わず、内部まで乾燥可能であること | 
| 拭き取り・洗浄対応 | アルコールや中性洗剤での清掃に耐える表面仕上げ | 
| 防火性能 | 不燃または準不燃素材(建築基準法適合) | 
| 耐薬品性 | 食品油脂や洗浄剤、消毒薬に対して劣化しないこと | 
| 長期安定性 | 経年変化・変色が少なく、性能が持続すること | 
これらを満たす素材として、Broadband Fractal Board(BFB)のような非繊維系吸音材が実用化されています。
BFBは粉塵を出さず、清掃・洗浄にも対応できる構造を持ち、クリーンルームレベルの清浄度にも適合します。
洗える吸音壁の基本構造と機能
清掃可能で衛生的な吸音壁を構成するには、吸音層・外装パネル・ジョイント処理の三要素を適切に設計する必要があります。
| 表面パネル | 硬質で平滑な防水面(ステンレスまたは硬質樹脂) | 
|---|---|
| 吸音層 | 非繊維系広帯域吸音材(例:BFB) | 
| 背面構造 | 防錆鋼板またはアルミバックプレート | 
| 継ぎ目処理 | シーリングまたは気密ジョイントで粉塵流入を防止 | 
この構造により、音の反射を抑えながらも、表面は衛生的・清掃容易・高耐久という三要素を同時に満たすことができます。
設計・施工・メンテナンスの要点
設計段階での注意点
- 1. 吸音パネルは、反射が強い壁面または天井部に重点配置する。
- 2. 空調気流や換気流路を妨げない位置に設置する。
- 3. 吸音性能だけでなく、清掃アクセス性を考慮してモジュール化する。
施工段階でのポイント
- 稼働中設備でも短期間で取り付けできる構造を採用する。
- 吊り下げ型や脱着式パネルを使用し、定期的な清掃・点検を容易にする。
メンテナンス
- 通常清掃はアルコールまたは中性洗剤による拭き取りで十分。
- 年1回程度のパネル点検とジョイント再確認を推奨。
- 定期清掃後も吸音性能が長期的に安定する構造とする。
まとめ:衛生的な静音構造が品質を支える
騒音対策と衛生管理は、これまで別々に扱われてきました。
しかし、HACCPやGMPに基づく品質管理では、「清潔で安全な音環境」が求められています。
洗える吸音壁は、衛生性・清掃性・吸音性能を兼ね備えた内装ソリューションとして、食品・医薬・クリーン分野における新しい品質基準を形づくる技術です。
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