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なぜ防音室や無響室の内装吸音材は不燃認定品である必要があるのか

2026/05/18

はじめに:すべての室で一律に義務ではない。しかし、実務上は極めて重要である

防音室や無響室の内装吸音材には、高い吸音性能だけでなく、火災時の安全性も求められます。

ただし、ここでまず整理しておくべき重要な点があります。建築基準法上、不燃材料の使用が必要になるかどうかは、建物の用途、規模、構造、設置場所、防火地域の指定、室の使い方によって変わります。

つまり、防音室や無響室だからといって、すべてのケースで一律に「不燃材料でなければならない」と決まっているわけではありません。一方で、研究施設、工場、大学、自動車関連施設、品質評価室などに設置される防音室・無響室では、建築確認、消防協議、社内安全審査、施設管理基準の観点から、不燃認定品を採用することが実務上の標準条件になるケースが多いといえます。

本記事では、建築法規上の整理と、音響試験室としての実務上の理由の両面から、なぜ防音室や無響室の内装吸音材に不燃認定品が求められるのかを解説します。

建築で不燃材料が必要になる主なケース

建築分野で不燃材料が求められる代表的な場面は、主に次の3つです。

区分主な対象防音室・無響室との関係
内装制限特殊建築物、大規模建築物、無窓居室、火気使用室などの壁・天井吸音材が壁・天井の仕上げとみなされる場合に直結する
建物本体の防耐火規定耐火建築物・準耐火建築物の主要構造部、外壁、延焼のおそれのある部分など建物側の構造・外装条件として関係する
工作物・外部造作物防火地域内の屋上看板、高さ3m超の看板・広告塔等(建築基準法第66条)防音室の主題からは外れる

このうち本記事の主題に直結するのは「内装制限」です。建物本体の防耐火規定や外部工作物の規定(看板等)は、防音室・無響室の内装吸音材の議論からはやや離れるため、以下では内装制限を中心に整理します。

建築基準法における不燃材料とは、不燃性能について技術的基準に適合し、国土交通大臣が定めたもの、または国土交通大臣の認定を受けた建築材料を指します。不燃性能の基準は、通常の火災による火熱を受けた場合に、

  • 加熱開始後20分間、燃焼しないこと
  • 防火上有害な変形・溶融・き裂等を生じないこと
  • 避難上有害な煙・ガスを発生しないこと

の3点です(建築基準法施行令第108条の2)。

内装制限では「壁・天井」が重要になる

防音室や無響室で特に関係しやすいのが、建築基準法の内装制限です。

内装制限は、壁や天井など室内に面する部分の仕上げを、不燃材料・準不燃材料・難燃材料などで仕上げることにより、火災の初期成長を抑え、フラッシュオーバー(室全体が一瞬で炎に包まれる現象)を遅らせ、避難や消火活動をしやすくするための規定です。

内装制限の対象になりやすい代表例は、次のような建築物または室です。

対象内容
特殊建築物飲食店、病院、ホテル、物品販売店舗、展示場、劇場、集会場、自動車車庫、自動車修理工場など
地階・地下店舗等地下に不特定多数が利用する用途を設ける場合など
無窓居室採光・換気・排煙上、有効な開口部が不足する室
火気使用室調理室、ボイラー室、火を使用する作業室など
大規模建築物階数・延べ面積により内装制限を受ける建築物

一方で、一般的な事務所、いわゆる通常のオフィスは、原則として特殊建築物には該当しません。そのため、単純に「オフィスに設置する防音室だから必ず内装制限の対象」とは言えません。

ただし、次のような場合は注意が必要です。

注意すべきケース理由
テナントビル側の内装基準で不燃材指定がある法令とは別に、ビル管理規約・貸主基準で求められる場合がある
室が無窓居室に該当する排煙・避難上の制約から内装制限が厳しくなる
火気使用設備や発熱設備を併設する火気使用室として扱われる可能性がある
倉庫・機械室・試験設備室を兼ねる用途判断や消防協議で個別確認が必要になる
工場・研究所・自動車関連施設内に設置する建物全体の用途・防火区画・避難計画との関係が生じる

防音室や無響室では、「吸音材が単なる設備部材なのか、壁・天井の内装仕上げなのか」が重要になります。吸音材が室内側の大部分を覆い、実質的に壁・天井の仕上げを構成する場合には、内装制限との関係を慎重に確認する必要があります。

防音室・無響室は、構造的に「無窓居室」になりやすい

ここからが、防音室・無響室にとって本質的なポイントです。

防音室・無響室は、遮音性能を確保するために外周壁・天井に窓を設けない構造になりがちです。一方で、人が継続的に作業する室は建築基準法上の「居室」に該当します(建基法第2条4号)。原則として居室には採光・換気のための開口部が要求されます(法第28条)。

ただし、放送室(スタジオ)、聴覚検査室、音楽練習室等の「用途上やむを得ない居室」については、旧建設省通達(住指発第104号)により、採光のための開口部を要しないものとして取り扱うことが認められています。

この扱いを受けるかどうかにかかわらず、防音室・無響室は実務上「無窓居室」として扱われるケースが多く、その時点で次の規定が自動的に適用されます。

規定内容
法第35条の3/令第111条(防火上の無窓居室)採光有効面積が床面積の1/20未満、または直径1mの円が内接できる窓がない居室は、主要構造部を耐火構造とするか、壁・天井の下地・仕上げを不燃材で造る必要
令第128条の3の2(内装制限上の無窓居室)床面積が50㎡を超え、開放可能な開口部面積が床面積の1/50未満の居室は、壁・天井を準不燃以上で仕上げる必要
令第120条(避難距離の制限)無窓居室の場合は30m以内に避難経路を確保

つまり、防音室・無響室はその音響的要件のために、ほぼ自動的に内装制限の対象となります。これが、「内装吸音材は不燃認定品でなければならない」と言われる最大の理由です。

防音室・無響室では、吸音材の面積が非常に大きい

防音室や無響室のもう一つの特徴は、吸音材が室内の広い面積を覆うことです。

一般的な会議室や事務室であれば、内装材はクロス、ボード、天井材などが中心です。一方、無響室では壁・天井に吸音楔や吸音パネルを設け、全無響室では床側にも吸音構造を設ける場合があります。このような空間では、吸音材そのものが室内仕上げの主要部分になります。したがって、吸音材が燃えやすい材料で構成されていると、火災時に火炎が室内表面を伝って拡大するリスクがあります。

さらに、防音室や無響室には次のような特徴があります。

特徴火災安全上の注意点
高気密・高遮音構造煙や熱がこもりやすく、外部から異常に気づきにくい場合がある
重量扉・二重扉を用いる避難動作に時間を要する場合がある
吸音材の背後に空気層がある熱・煙・燃焼生成物の流れを考慮する必要がある
電気設備・計測機器を併設する電源、配線、発熱機器が火源となるリスクを管理する必要がある
人が単独で入室することがある異常時の避難・通報体制が重要になる

そのため、防音室や無響室では、法令上の最低条件だけでなく、施設としての安全余裕を見込んだ材料選定が重要になります。

建築確認・消防協議で重要な根拠になる

防音室や無響室に不燃認定品を採用する大きな理由の一つは、建築確認や消防協議で、材料の防火性能を明確に説明できることです。

防音室や無響室は、建築物の中に後から設置されるケースも多くあります。そのため、設計者、確認検査機関、所轄消防、施設管理者から、次のような確認を求められることがあります。

確認されやすい事項内容
室の用途試験室、研究室、機械室、倉庫、作業室、居室のどれに該当するか
設置場所地上階、地下階、無窓階、避難経路付近か
内装材の防火性能不燃、準不燃、難燃、防炎のどれか
認定番号NM、QM、RM等の認定番号を提示できるか
認定仕様との整合表面材、芯材、下地、固定方法、接着剤まで認定条件と一致しているか
消防設備との関係感知器、スプリンクラー、排煙、非常放送などに支障がないか

このとき、不燃認定品を採用していれば、単に「燃えにくい材料です」と説明するのではなく、建築材料として公的な評価を受けた仕様であることを示せます。

特に、吸音材が壁・天井の広範囲を覆う無響室では、材料の防火性能を客観的に説明できることが、協議を円滑に進めるうえで重要です。

違反した場合のリスク

内装制限に違反した場合、建築基準法上は建築主または建築士が懲役または罰金のペナルティを受け得ます。消防法側にも別途規定があります。さらに実務上の影響として、

  • 建築確認が下りない/検査済証が交付されない
  • 既存不適格になり、増改築時の再対応が必要になる
  • 火災発生時、保険・賠償において不利な扱いを受ける可能性
  • 施主・テナント側の社内コンプライアンス基準を満たせず、納入後に手戻りが発生する

があります。「音響性能を上げるためにとりあえず非認定品を入れる」という判断は、コスト面でも法務面でもまったく割に合いません。

「防炎」「難燃」「準不燃」「不燃」は同じではない

吸音材や内装材のカタログでは、「防炎」「難燃」「不燃」といった言葉が使われることがあります。しかし、これらは同じ意味ではありません。

区分性能時間主な考え方注意点
防炎消防法系の概念。カーテン、じゅうたん、布類などで使われることが多い建築基準法上の不燃材料とは別物
難燃材料加熱開始後5分間建築基準法上の防火材料の一つ認定番号はRM-○○○○
準不燃材料加熱開始後10分間不燃より短い加熱時間で所定性能を満たす認定番号はQM-○○○○。内装制限では準不燃以上が求められるケースが多い
不燃材料加熱開始後20分間最も性能時間が長く、説明しやすく安全側の選定になりやすい認定番号はNM-○○○○

ここで重要なのは、法令上は用途や規模によって「準不燃材料で足りる」場合もあることです。常に不燃材料でなければ違法、というわけではありません。

しかし、防音室や無響室では、吸音材の使用面積が大きく、火災時の避難性や煙の影響も考慮する必要があります。そのため、実務上は準不燃で足りる可能性がある場合でも、不燃認定品を優先採用することが安全側の判断になります。

なお、注意点として、「素材としてのグラスウール・ロックウールが不燃」ということと、「特定の製品が不燃認定を取得している」ということは別です。たとえば、グラスウール本体は告示で不燃材料に位置付けられていても、表面に貼る化粧クロスや、固定に使う接着剤の有機分が多ければ、製品単位での個別認定(NM番号)が必要になります。製品レベルで国土交通大臣認定を保有しているかを、個別に確認することが基本です。

音響性能と不燃性能は両立できる

無響室において重要なのは、吸音材の種類そのものではなく、最終的に必要な音場性能を満たすことです。

無響室・半無響室は、自由音場または反射面上の自由音場を得るための試験室であり、性能評価では逆二乗則の成立が重要になります。ISO 3745:2012では、旧ISO 3745:2003にあった吸音材仕様に関する規定が削除され、逆二乗則などの音場性能を満たすことがより重視される方向に整理されています。

また、環境補正値の許容範囲も規格ごとに異なり、

  • ISO 3745:K2 ≤ 0.5 dB(高精度音響パワー測定)
  • ISO 3744:0 ≤ K2 ≤ 4 dB(より実用的な半無響環境)

のように扱われています。これは、防火性能を考えるうえでも重要です。従来のように吸音率だけを追求して材料を選ぶのではなく、不燃性、耐久性、粉じん対策、施工性、清掃性、交換性を含めて、最終的に必要な自由音場・半自由音場を実現するという設計が可能だからです。

ソノーラでは、対象周波数、室内寸法、遮音性能、法規条件、施工条件を総合的に検討し、音響性能と安全性の両立を図ることが重要だと考えています。

ソノーラの方針 ― BFシリーズ

ソノーラテクノロジーでは、無響室・無響箱・防音室の内装に用いる吸音材について、国土交通大臣認定(不燃/準不燃)を取得した製品を標準仕様としています。中核となるのが、自社開発のBFシリーズ(BFW/BFB/BFP)です。

いずれも、基材にガラス繊維吸音材、表面材にデュポン™タイベック®を採用しているのが共通点です。タイベック®は通気性をもつため背面材の吸音性能を阻害せず、同時に不透水・耐スクラッチ・高白色度・低発塵性を備えており、繊維飛散による「チクチク感」もありません。

 BFWBFBBFP
形状吸音クサビ吸音板半円柱形吸音材
用途全無響室・半無響室の内装吸音層防音室、機械室、各種吸音内装工事防音室、機械室、各種吸音内装工事
特徴低周波から高周波域まで高い吸音性を発揮中周波から高周波帯域で高い吸音性を発揮嵌め込み工法によりワンタッチで着脱が可能

このうち新型吸音板BFBは、国土交通大臣の不燃認定(NM-4938)を取得済みの製品です。本記事で前述した「無窓居室の内装制限」「特殊建築物の内装制限」のいずれの場面でも、合法的に内装吸音材として使用できます。

さらにBFBには96Kクリーンルーム対応グレードもあり、(一財)カケンテストセンターでの試験においてISO 14644-1 クラス5基準(3,520個/m³)およびFed-Std-209E クラス100基準(100個/ft³)を下回る発塵性が確認されています。半導体・精密機器・医薬関連のクリーンルーム内吸音対策にも適用可能です。

ソノーラテクノロジーでは、これらBFシリーズと、用途に応じた他社製不燃認定吸音材を組み合わせ、設置される建物の内装制限要件・清浄度要件・意匠要件と整合する仕様を案件ごとに確定しています。

設計時に確認すべきチェックポイント

防音室・無響室の内装吸音材を選定する際は、次の項目を確認することが重要です。

確認項目チェック内容
建物用途事務所、工場、研究所、学校、病院、店舗、自動車関連施設など
室の用途試験室、研究室、機械室、倉庫、作業室、居室のどれに該当するか
設置階地上階、地下階、無窓階か
火気・発熱設備火気使用室、発熱機器、電源設備の有無
内装制限の有無壁・天井に制限がかかるか
材料区分不燃、準不燃、難燃、防炎のどれか
認定番号NM、QM、RM等を確認できるか
認定仕様材料単体ではなく、下地・接着剤・固定方法まで整合しているか
消防設備感知器、スプリンクラー、非常照明、排煙設備との干渉がないか
管理基準施主、ビル管理者、社内安全基準で不燃材指定があるか

特に注意すべきなのは、材料単体が不燃でも、施工構成が認定仕様と異なれば、不燃認定仕様として扱えない場合があることです。吸音材本体だけでなく、表面材、裏打ち材、下地、接着剤、固定金物、目地処理まで含めて確認する必要があります。

まとめ:不燃認定品は、音響性能を守るための安全基盤である

防音室や無響室の内装吸音材に不燃認定品が求められる理由は、単に「燃えにくい材料を使うため」ではありません。重要なのは、次の3点です。

法規対応建物の用途、規模、設置場所、無窓居室、火気使用室などの条件により、壁・天井の内装材に防火性能が求められる場合がある。とくに防音室・無響室は構造上「無窓居室」になりやすく、ほぼ自動的に内装制限の対象となる。
火災安全防音室や無響室では吸音材が大面積に使われるため、燃焼拡大、煙、有害ガス、避難性への配慮が不可欠である。
協議・審査対応不燃認定品を採用することで、建築確認、消防協議、社内安全審査、ビル管理者との調整において、防火性能を明確に説明できる。

防音室や無響室は、精密な音響測定や研究開発を支える重要な設備です。しかし、それは同時に、人が入り、設備を運転し、長期間使用する建築空間でもあります。

したがって、内装吸音材には高い吸音性能だけでなく、火災時の安全性、法令適合性、維持管理性まで含めた総合性能が求められます。

音を正しく測る空間だからこそ、安全性も正しく設計する。それが、防音室・無響室において不燃認定品の内装吸音材が重要とされる理由です。

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