技術情報

ケーブルの形状に合わせて密閉する ― EPDMゴムによる遮音

2026/05/13

ケーブルポートは、遮音設計上の弱点になりやすい

無響室・半無響室・無響箱、そして防音室には、外部から内部へ電源ケーブルや信号ケーブルを引き込むための「ケーブルポート」が設けられています。測定器の電源、マイクロホンや加速度ピックアップなどのセンサーケーブル、被測定物への駆動信号など、その用途は多岐にわたります。とくに無響箱のように比較的小型の測定空間では、内部に設置する供試体や測定器に対してケーブル本数が相対的に多くなりやすく、ケーブルポートの処理は遮音性能を確保するうえで一層重要になります。

しかし、遮音壁にケーブルを通す「貫通部」があるということは、その部分が遮音性能上の弱点になり得るということでもあります。一般に遮音性能は壁体面密度に依存しますが、壁面のごく一部に貫通部や隙間が存在するだけで、その「弱点」が支配的になり、壁体全体の透過損失が大きく低下することが知られています。

例え100mm厚の重量壁を用いていても、ケーブル周囲に1mmの隙間があるだけで、その箇所が音漏れ経路となり、室全体の遮音性能を律速します。したがって、ケーブルポートに求められるのは「ケーブルを通せること」ではなく「ケーブルを通した後でも、隙間を残さずに塞げること」です。

形状の異なるケーブルを、隙間なく密閉するという課題

ケーブルポートの難しさは、通すケーブルの本数・太さ・配置が現場ごとに異なる点にあります。

  • 太いケーブルもあれば、極細の測定用同軸ケーブルもある
  • 1本だけ通すこともあれば、複数本を束ねて通すこともある
  • ケーブルを後から追加・交換することもある

固定形状の蓋や、剛性の高いシール材では、これらすべての状況に対応することはできません。求められるのは、通したケーブルそのものの形状に追従して変形し、密着する素材です。

採用しているシール素材:イノアック製 EPDMゴムスポンジ E-4070

ソノーラテクノロジーの無響室・無響箱・防音室のケーブルポートでは、シール部に 株式会社イノアックコーポレーション製のEPDM系ゴムスポンジ「E-4070」 を採用しています。

EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)は、耐候性・耐寒性・耐オゾン性・耐老化性・溶剤性に優れ、反発弾性および電気的性能にも優れる素材で、自動車・工業・建築分野のシール材・パッキン材として広く使用されています。

E-4070はそのEPDMを発泡させた独立気泡タイプのスポンジで、低硬度・高い変形追従性を持つことが特徴です。代表的な物性値は以下のとおりです。

項目
材質EPDMスポンジ(独立気泡)
硬さ5 ± 3(タイプC)
見かけ密度0.10 ± 0.03 g/cm³
25%圧縮荷重9.8 ~ 39.2 kPa
引張強さ0.25 MPa 以上
伸び200% 以上
圧縮永久歪40% 以下

(メーカー試験値)

タイプC硬度5±3という値は、軽い力で大きく変形する「低硬度スポンジ」の領域です。25%圧縮時の荷重も10kPa前後からと低く、ケーブルを押しつけた際に、ゴムがケーブルの外径に沿って容易に変形することを示しています。

ケーブル形状への追従と密閉のメカニズム

ケーブルポートに通線した後、ゴム板でケーブルを押さえ込みます。このとき、E-4070の特性により次のような挙動が起こります。

  • 太さの異なるケーブルそれぞれに対して、ゴムが個別に圧縮・変形して密着する
  • 複数本を並べて通した場合、ケーブル間の隙間にもスポンジが入り込む
  • 独立気泡構造のため、長期的な吸水・通気を抑え、密閉状態を維持しやすい
  • 反発弾性により、ケーブルを抜き差ししても元の形状に戻ろうとし、再利用に耐える

つまり、E-4070は「ケーブル一本一本の形状に合わせてオーダーメイドのパッキンを形成する」ように機能します。ケーブル周囲に生じる幾何学的な隙間そのものを物理的に埋めることで、ケーブルポートからの音漏れ経路を遮断しています。

なぜソリッドゴムや高硬度シールではなく、低硬度EPDMスポンジなのか

シール材の選択肢としては、ソリッドゴム(中実ゴム)、シリコーンゴム、ウレタンフォームなどもあります。それぞれに長所はありますが、ケーブルポート用途においてEPDMスポンジを選定する理由は次のとおりです。

低硬度=高い形状追従性ソリッドゴムでは細いケーブルに対して十分に変形できず、隙間が残りやすい
独立気泡=吸水・通気を抑制オープンセル系のウレタンフォームは通気性があり、シール材としては不利
EPDM=長期安定性耐候性・耐オゾン性・耐老化性に優れ、屋内環境であっても長期にわたって性能が劣化しにくい
建築・産業シーリング材としての実績サッシ・ドアパッキン材、各種ダクトシール、ランプガスケットなど、シール用途での豊富な実績がある

まとめ

無響室・無響箱・防音室の遮音性能は、壁体そのものの性能だけではなく、ケーブルポートをはじめとする「貫通部」の処理によって大きく左右されます。むしろ貫通部こそが、現場での遮音性能を左右する律速段階となるケースは少なくありません。

ソノーラテクノロジーでは、低硬度EPDMスポンジ(イノアックコーポレーション製 E-4070)を採用することで、ケーブル一本一本の形状に追従する柔軟な密閉を実現しています。素材選定の段階から「現場でケーブルが変わっても、隙間なく塞げる」ことを前提とした設計を行うことで、ケーブルポートを遮音性能上の弱点にしない。これがソノーラが考える、無響室・無響箱・防音室いずれの製品にも共通する貫通部処理の基本姿勢です。

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