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無響室の老朽化と性能劣化への対応策
2025/07/09
- 無響室・防音室のソノーラ
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20年を経ても評価される“音場の信頼性”
ある日、当社に届いた一通のメール。
そこには、長年無響室を使い続けてくださったお客様からの、静かで力強い声が綴られていました。(PJ終了により弊社製無響室の廃棄となりました。)
20年に渡り不具合何一つなく御社製無響室の安定した高い性能を十二分に活用でき、弊社事業に多大の利益を提供頂けた事を感謝致します。
そして、さらにこう続きます。
「特に自社で立派な大無響室を持たれているお客様からも小回りが効き、個人やプロジェクトで占有できる無響室で様々な基本的開発方向を迅速に決定判断する簡易測定ができる点を羨ましがられる事が多々ありました。」
この言葉は、無響室が単なる測定空間ではなく、“開発力そのものを支える設備”であることを物語っています。
20年という長い年月の中で、測定精度と使いやすさが一貫して維持されてきたことは、
設計・素材・環境づくりのすべてが支え合ってこそ実現できた信頼の証です。
老朽化は“静かに”進行する
無響室は外観上の劣化が目立たなくても、音場性能は時間とともに確実に変化していきます。
特に次のような兆候があれば、内部性能の劣化が疑われます。
- 測定の再現性が不安定になる
- 暗騒音(背景ノイズ)の上昇
- 楔材の変質・剥がれ・浮き
- K2補正値が上昇し、ISO基準を満たさなくなる
ISO 3745:2012、3744:2010においては、
K2≦2 dB(準無響室)、K2≦4 dB(半無響室)といった厳しい要件があります。
これらを維持するには、定期的な音場評価と材料チェックが不可欠です。
音場を取り戻す:BFB・BFP・BFWの再設計
ソノーラでは、老朽化した無響室の改修にあたって、
BFB・BFP・BFWを活用した吸音材の刷新プランをご提案しています。
これらの吸音材はすべて、表面材にデュポン™ タイベック®を採用。
ガラスクロスを使用せず、粉塵の飛散を抑えながら広帯域の吸音性能を実現します。
結果として、清潔・快適・高性能な音響空間が構築でき、
従来のグラスウール系無響室に比べて、より長期的に安定した性能維持が可能です。
また、必要に応じて遮音・構造補強を行う場合は、ソラメタパネルの併用も効果的です。
遮音性と施工性に優れた金属系複合パネルで、無響室の開口部や設備導入部にも対応可能。
BFBなどと併せて使うことで、音場と遮音の両立した測定空間が構築できます。
ソラメタパネルについての詳細はこちら
https://www.soundenvironment.jp/technology/solametapanel/
自社無響室の「価値」と「責任」
自社に無響室を持つことは、単なる設備保有ではありません。
それは、開発のスピードと判断の自由を自らの手に取り戻すことでもあります。
◎ メリット
- 試作直後にすぐ測定できる → 評価の高速化
- プロジェクト単位で占有できる → 判断の即断即決
- 測定データを外部に出さない → 機密保持性が高い
△ 留意点
- 空調・暗騒音などの定期的な再調整が必要
- K2補正や逆二乗則の継続的な音場評価が不可欠
- 専任の設備管理や維持コストも想定しておく必要あり
冒頭で紹介したお客様のように、他社から「羨ましがられる無響室」を手に入れた企業は、
測定設備を単なる道具ではなく、競争力そのものとして活かしているのです。
無響室の未来は「快適性」と「精度」の両立へ
現代の無響室は、もう“耳が痛くなる場所”ではありません。
音を測る人、音を創る人が、安心して長時間過ごせる空間であるべきです。
BFB・BFP・BFWの吸音材は、タイベック®による清潔性と低粉塵性を備え、
しかもISO準拠の逆二乗則を安定して成立させる吸音性能を両立。
快適で人に優しく、なおかつ測定精度を妥協しない空間が、今ここに実現します。
最後に
無響室は“作って終わり”ではありません。
それは静寂を守り続ける音響資産であり、
時には再検証し、再調整し、再び最前線へと蘇らせるべき存在です。
ソノーラは、無響室の「今」を診断し、
吸音材・構造・測定環境のすべてを次の時代の音場に最適化します。
音を測る空間から、音を創る空間へ――。
無響室の進化は、御客様の開発にもう一つの力を与えます。
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SHOW ROOMソノーラ・ショールームのご案内
無響室・防音室メーカーであるソノーラテクノロジーでは、東京、静岡、愛知、兵庫を拠点に、全国対応が可能です。音響測定・調査・診断~設計製造・施工・保証迄の自社一貫体制です。また御殿場市の「富士山テクニカルセンター」には無響室・防音室のショールームがあります。実際に測定器を使用した状態で、当社製品の高い性能を確認いただきながら、独特の無響空間を体感することができます。またショールームの他に、当社紹介の映像、工場の見学も合わせて実施しております。国内にて無響室を無料開放している機関はほとんどありません。製品の購入を検討されている方、当社へ興味をお持ちの方、 一般の方、メディアの方など業務外での御利用も可能です。是非お越し下さい。
※現在、一時的に一般個人の方の見学予約を中止させて頂いております。御了承の程お願い致します。
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