技術情報
無響箱(AEB)は“箱”ではない。
― 治具・搬送・測定機器を統合した、音響測定のトータルシステムという発想 ―
2025/09/15
- 無響室・防音室のソノーラ
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- 無響箱(AEB)は“箱”ではない。

はじめに:AEB=無響箱とは?
AEB(Anechoic Box)=無響箱は、小型製品や部品の音響特性を測定するために設計された、自由音場構成をもつ小型音響試験装置です。
一見シンプルな「箱型構造」に見えるこの設備も、私たちは単なる吸音構造物とは考えていません。
AEBは、測定精度の再現性と作業者によらない操作性を両立させる、“音響測定を標準化するシステム”です。
なぜ「箱だけ」では不十分なのか
製造現場や開発現場では、以下のような測定上の課題が発生しがちです。
- 設置角度やマイク距離で測定結果がばらつく
- 操作が測定者の経験に依存してしまう
- 測定設定や解析条件が属人化しやすい
- 製品ごとに治具が異なり、切り替えに時間がかかる
- 外部無響室への委託は時間・コストが負担
こうした課題は、「無響空間があること」ではなく、測定そのものがシステム化されていないことに起因します。
ソノーラのAEBシステム構成(例)
ソノーラでは、無響箱を中核とし、音響測定の一連プロセスをパッケージ化した統合測定システムを構築しています。
無響箱本体(AEB) | 広帯域吸音材により自由音場環境を形成 |
---|---|
音響解析機器 | HBK製マイク、アンプ、FFT解析装置など |
設置治具 | 対象物の位置・姿勢を再現可能な専用固定台 |
搬送機構 | スライドトレイ式挿入/多治具対応型も可能 |
ソフトウェア | OK/NG自動判定付きGUI操作画面 |
外部I/O連携 | PLC・ライン制御との信号接続可能 |
これにより、「入れる → 測る → 判定」までのプロセスを誰でも同じ精度で繰り返せる環境が整います。
活用例
- スマートスピーカーの音圧・感度検査
- 音声UI端末のマイク・スピーカー機能確認
- MEMSマイクの組込後の特性測定
- 小型モーターやセンサの騒音評価と合否判定
- 多品種製品の切替式検査フローへの統合
まとめ:無響箱は“構造”ではなく“仕組み”
無響箱(AEB)を“測定空間”とだけ捉えるのではなく、音響品質管理を標準化・省力化するための運用システムと考えることが重要です。
設計、検査、製造の現場で求められるのは、誰が操作しても同じ結果が得られる仕組みです。
AEBは“箱”ではなく、“信頼性を支える道具”として活躍します。
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