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音漏れを止める壁
─ 遮音構造の基本と誤解 ─
2025/11/07


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はじめに
「壁を厚くすれば防音になる」——この考え方は、半分正解で半分誤りです。
実際には、音漏れの多くは壁の“構造”と“接続部”の設計不備に起因します。
遮音とは単に壁を重くすることではなく、音の伝わり方を制御すること。
本記事では、遮音構造の基本原理とよくある誤解、そして吸音材(BFシリーズ)を組み合わせた
実践的な遮音設計の考え方を紹介します。
遮音の基本原理
遮音は「音を通さない」構造をつくる技術です。
音は空気の振動(空気伝搬音)と、構造の振動(固体伝搬音)として伝わります。
| 音の伝わり方 | 例 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 空気伝搬音 | モータ音、話し声、送風音 | 壁・扉などの遮音性能を高める |
| 固体伝搬音 | 床・梁・ダクトを通る振動 | 防振構造で経路を遮断する |
つまり、壁だけではなく「音の経路全体」を意識した構造設計が重要になります。
「壁を厚くすれば防音できる」は誤解
壁を厚くすると遮音性能(透過損失)は確かに上がりますが、ある程度を超えると効果が頭打ちになることが知られています。
主な理由は次の3つです。
1. 共振透過の存在
一定周波数で壁が振動し、音を再放射してしまう。
2. 隙間・継ぎ目からの漏音
わずかな開口部が大きな漏れ経路になる。
3. 低周波には厚さが追いつかない
長波長の音は壁を“押して通る”ため、質量増加だけでは限界がある。
このため、単一壁よりも複層構造(質量+空気層+吸音層)が有効になります。
遮音性能を決める三つの要素
遮音構造は「質量」「空気層」「吸音層」の3つで成立しています。
1. 質量(Mass)
重い材料ほど音を通しにくくなる。鉄板・石膏ボード・高密度パネルなどが使用される。
2. 空気層(Cavity)
2枚の壁の間に空気層を設けることで音の伝達を遅らせる。
3. 吸音層(Absorber)
空気層内で反射・共鳴を抑える役割。ここにBFシリーズが効果的に機能します。
この「三層のバランス」が、遮音性能を大きく左右します。
特に吸音層を適切に設けることで、壁内部の共鳴(ダブルウォール共振)を防止できます。
BFシリーズを使った複層遮音構造
BFシリーズ(Broadband Fractal Series)は、非繊維系で広帯域吸音性能を持ち、粉塵を出さず、工場・研究施設・クリーン環境にも対応可能です。
複層遮音構造では、以下のように活用されます。
- 壁内吸音層として配置し、遮音壁内部の反射・共鳴を減衰
- 天井やパーティション背面に取り付けて反射音を抑制
- 機械囲いの内面処理として、金属反射を防止
BFシリーズの吸音層を加えることで、遮音性能の実効値が向上し、中・高音域の音漏れを安定的に抑えることができます。
遮音設計で見落とされがちなポイント
遮音性能を左右するのは、壁材の性能そのものよりも接続部の設計と施工品質です。
- 壁と床・天井の取り合い部
- 配管・ダクト・ケーブルの貫通部
- ドアやメンテナンス口のシール不良
これらが1ヶ所でも不完全だと、全体の遮音性能が大きく低下します。
つまり、防音壁は「面」だけでなく「線」や「点」で設計しなければなりません。
まとめ:遮音は“止める”ではなく“制御する”
遮音は、単に音を止めるための壁ではなく、音エネルギーを制御する仕組みです。
質量・空気層・吸音層の三要素を適切に組み合わせることで、軽量でも高性能な防音構造を設計できます。
BFシリーズは、その中で吸音層として反射と共鳴を抑え、遮音構造の性能を安定化させる重要な役割を果たします。
“厚い壁”ではなく、“整えられた壁”こそが、真の防音です。
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