技術情報
「完全無響」と「半無響」の違いとは?
― 測定目的・設置条件による選定ポイントと誤解されやすい注意点 ―
2025/08/01
- 無響室・防音室のソノーラ
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- 「完全無響」と「半無響」の違いとは?

はじめに:無響室には“2種類”ある
音響測定や音環境評価において、「無響室」と呼ばれる施設は大きく分けて次の2つに分類されます。
- 完全無響室(Fully Anechoic Chamber:FAC)
- 半無響室(Semi-Anechoic Chamber:SAC)
それぞれの設計目的や構造、使い方には明確な違いがあり、誤った選定は測定精度やコストに大きな影響を及ぼします。
完全無響室(FAC)とは?
FACは、全方向からの反射音を排除した理想的な自由音場を実現するための施設です。
壁・天井・床の6面すべてが吸音構造で覆われ、主に以下の用途に適しています。
- スピーカーやマイクなどの自由音場応答測定
- 騒音源の音響放射指向性評価
- ヘッドフォンや補聴器などの頭部周囲音響測定
ただし、浮床構造の採用により、構造コストや天井高の要求が非常に高い点に注意が必要です。
半無響室(SAC)とは?
SACは、壁・天井は吸音構造、床はコンクリート反射面という構成で、地面設置が前提の試験に対応するための形式です。
以下のような用途に適しています。
- 車両・機器などの音響パワー測定(ISO 3744など)
- 家電や機械製品の稼働音評価
- EV/AVAS等の地面反射を含む実音再現試験
特に大型重量物の試験や、実機設置が必要な産業用途では、SACが現実的かつ有効です。
よくある誤解と注意点
誤解内容 | 実際のところ |
---|---|
「完全無響=測定精度が高い」 | 測定目的によってはSACの方が適切な場合も |
「FACの方が吸音性能が高い」 | SACでもISO適合の自由音場が得られる |
「SACは測定が不安定になりやすい」 | 床反射を含めたモデルなら問題ない |
「床に吸音材を置けばFACと同等」 | 天井・床の相互干渉を制御しないと不安定 |
ソノーラの対応例:用途と規格に応じた柔軟な設計
当社では、FAC・SACを用途に応じて次のように最適化しています。
FAC | MFAC(Modular Fully Anechoic Chamber)として設置性と遮音性を両立 |
---|---|
SAC | VSAC(車両試験対応)やMSAC(汎用タイプ)として、ISO 3744/26101に準拠 |
床付きFAC(特殊) | フローティング床構造を維持しつつ、歩行可能な構成に設計することも可能 |
まとめ:用途に合った“無響”を選ぶ
FACとSACの選択は、「どちらが優れているか」ではなく「何を測定するか」が基準です。
測定周波数、反射条件、設置スペースなどの条件に合わせて、最も合理的な“無響”を選定することが、測定精度とコストの最適化につながります。
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