技術情報

無響室の「浮床構造」とは何か？

― 床からの振動・騒音を遮断するための構造技術とその応用 ―

2025/09/10

無響室・防音室のソノーラ
技術情報
無響室の「浮床構造」とは何か？

はじめに：なぜ“床”が音響測定の障害になるのか

無響室の設計で見落とされがちなのが「床構造」の問題です。
外部から伝わる構造伝播音（固体伝播）は、壁や天井よりも床を通して伝わりやすく、音響測定の精度に大きな影響を及ぼします。
とくに低周波・振動系の試験においては、床からのノイズ遮断が最重要になります。

浮床構造とは？

浮床（Floating Floor）は、床構造を建屋本体と物理的に切り離すことで、振動・騒音の伝播を遮断する構造です。
一般的には以下のような多層構造で構成されます：

基礎（コンクリートスラブ）
緩衝材（防振ゴム、スプリング、パネル型支持体など）
二次床（歩行可能な仕上げ床）

この構造により、建屋の振動源（エレベーター、道路、他階の機器など）からの影響を大幅に低減できます。

必要性が高まる場面とは

浮床構造は以下のような条件で特に有効です：

鉄骨構造や中高層ビル内への設置
交通量の多い都市部、幹線道路沿い
低周波試験（20～200 Hz）を含む測定
高感度マイクや微小音測定への対応
建屋内の他用途（工場設備、医療機器など）との併設時

ソノーラの浮床設計：構造設計と音響の両立

当社では無響室における浮床構造において、以下のような工学的アプローチをとっています：

防振ゴム＋合板積層パネルによる低周波遮断構造
荷重・機器重量に応じた支持ピッチの最適化
通気・結露対策としての二次床下空間設計
必要に応じてフローティング吸音材構造（床も吸音化）を併設可能
機器や試験体設置のためのアンカー処理・配線床設計にも対応

MFAC・VSACへの応用例

MFAC（Modular Fully Anechoic Chamber）では、床吸音と防振の両立が要求されるケースに最適
VSAC（Vehicle Semi-Anechoic Chamber）では、車両振動試験とAVAS対応のため、部分的な浮床＋耐荷重床構成を導入
医療機器・音響センサー試験用の無響室でも、高階層設置においては浮床が不可欠

まとめ：振動を断ち、音を信頼に変える

優れた無響環境とは、空気音だけでなく振動ノイズも抑制された空間です。
浮床構造は、目に見えない“振動の伝播路”を遮断し、測定結果の信頼性を保証するための土台となります。
設置場所や用途に応じて、最適な床構造の選定と設計が必要です。

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