技術情報

温度・湿度の空気減衰率への影響

2022/10/24

温度・湿度に影響を受ける測定は、残響時間の測定である。劇場などの室内の残響時間の測定は、測定時の室内の温度湿度を併記することが求められる。温度・湿度の影響については、前川純一著の「建築・環境音響学」にHarrisの引用として、空気吸音による減衰率の変化について記されている。ここでは1.0kHzから12.5kHzまで記されていて、20℃のときと5℃の時の空気の減衰率が書かれている。残響時間の測定では一般的に用いる周波数は63Hzから8000Hzであるが、1000Hz以下は温度・湿度に対する影響は非常に小さいために無視してよいとある。要するにここでは高い周波数ほど温度・湿度に影響を受ける。また温度が20℃の場合には、湿度が10~20%の時に減衰率が最も大きく、それ以上は平坦な特性となってきている。また温度が低くなると減衰率のピークは周波数が高い方へ変化する。

 
空気吸音による減衰率(C. M. Harris)
空気吸音による減衰率(C. M. Harris)

図3-10 空気吸音による減衰率(C. M. Harris)
引用:前川純一著 「建築・環境音響学」

また室内の残響時間を求めるときに用いている残響時間の式は、一般的にEyring-Knudsenの残響式を用いる。引用:前述 前川純一著「建築・環境音響学」

ただしT: 残響時間(秒)、K:定数、V:室容積(m3)、S:室表面積(m2)、α:平均吸音率、m:空気減衰率、loge:自然対数

ここで室容積や室表面積が一定の場合には、空気減衰率が大きい方が、残響時間は短くなることがわかる。

つぎに吸音率を求めるためのJISA1409:1998 (2011確認)「残響室法吸音率の測定方法」 では温度・湿度についてどう書いているか確認する。測定原理のところでは、残響室に試料を入れた状態と入れない状態における残響時間を測定し、それらの残響時間から試料の等価吸音面積A(残響室法吸音率ともいう)を算出する。温度・相対湿度の項目では、室内の相対湿度は40%より大きいものとし、残響時間T1とT2の一連の測定の間、相対湿度と温度は可能の限り一定にし、表を満たすことが望ましい。

表 T1とT2の測定中の温度及び相対湿度の許容変化範囲

相対湿度の範囲測定中の相対湿度の許容変化範囲測定中の温度の許容変化範囲測定温度の下限
40-60%3%3℃10℃
>60%5%5℃10℃

ISO354:2003では湿度は30%から90%の間にするが、温度は15℃程度に維持する必要があるとあり、JISとは制限について違いがみられるが、いずれにしても試験中は温度・相対湿度を一定にする必要があることがわかる。

ここで温度・湿度に関連した実例を示す。某屋内プールにおいて、セメント系の多孔質吸音材ポアセルがプールの歩廊上の天井に貼られているものを撤去し、事前事後で残響時間を計測した。ポアセルは約28m2.減少したが、その結果2.72秒/500Hzから2.92秒/500Hzと残響時間が多少長めに変化した。工事期間をはさみ1年ほど経過しているため、これが測定誤差なのか、温度相対湿度の影響か、それとも真に吸音材の減少に伴うものなのか気になった。測定機械は、撤去前、撤去後でも同じ測定機材であるために変化は少ないと考えられた。また幸いここは温水プールで、温水を維持するために空調が24時間稼働していたため、ポアセル撤去前:温度23.0℃、相対湿度71.7%、撤去後:温度16.9℃、相対湿度68.8%と、温度については6度と多少変化はあったが、湿度はほぼ変化がなく、この変化は主にポアセルの減少に見合ったものではないかと考えられた。

現場測定では、室内の環境が時間とともに変化することが多く、残響時間などの測定では、温度・相対湿度の測定が合わせて重要であることがわかる。

YAB Corporation
藪下 満

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